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2008年12月3日更新

どうなる? 2009年新築マンション市況(首都圏篇)
地価や建築資材の高騰などを受けて2007年に急上昇したマンション価格は、08年前半にほぼ高止まりし、秋ぐらいからいわゆる「新価格」と呼ばれる実質的な値引きが始まっています。では、価格が下がったのなら、売れ行きは上がったのでしょうか? 答えはNO。供給が減って市場が縮小し、高止まりした頃から様子見を続けていた消費者は、まだ買い控えの状態にあります。ここ近年には見られなかった異常な事態。さて、2009年はどうなる?
利便性を凝縮した効率重視の住まい、
大規模・タワーマンションの「岐路」

 09年の新築マンション市況はどのように展開していくのでしょうか。東京カンテイ市場調査部上席主任研究員・中山登志朗さんに解説していただきました(以下、コメントはすべて中山さん)。
「2000年頃から都心回帰ブームは、大規模・タワーマンションが牽引してきました。
大規模やタワーとは、さまざまな共用施設や設備をマンションの中に集約して、居住者に高い利便性を約束するマンションです。ジムやシアタールーム、スポーツジム、プールに温泉まで設けた物件もありました」

 しかし、こうした利便性を重視した大規模・タワーマンションはもはや“カード”を使い果たし、個性や魅力を失っているのでは? と中山さんはいいます。

タワーでありさえすれば問題ない
という時代は終わりを迎えつつある?

「07年までは、マンション価格が高騰し、売れ行きがにぶっていたにもかかわらず、タワー・大規模は比較的高い契約率を維持してきました。しかし、利便性を凝縮した“効率性重視の暮らし”が実現する大規模・タワーが新鮮味を失い、そこにマンション価格の高騰が重なって、団塊ジュニア世代を中心とした消費者の購入マインドが冷え込んでしまったのです」

 08年10月〜11月頃からは多くの物件で「新価格」と銘打った、実質的な値下げも始まりました。にもかかわらず、消費者の購入意欲はいまだ上がる気配を見せません。この傾向は09年にかけても続きそうです。

消費者が知りたいのは、割安感の明確な「根拠」

「そして、いまの消費者の中には、ただ安いというだけでは納得しない傾向が強くなっています。安くなっている理由を知りたいと考え、少しでもコストパフォーマンスに優れたマンションを買いたいという消費者が増えているのです。しかも、低価格なだけでなく、その理由が明確であることが大切です。消費者が“このような住まいのクオリティや住環境で、このくらいの価格設定なら納得できる”という根拠が明示された割安感のあるマンションですね」
 では、消費者は具体的にどんなマンションを求め、納得いく買い物だと考えてくれるのでしょうか? ここ最近販売されて話題になったマンションをピックアップしてみます。

建築工事が進むパークコート神宮前。原宿、東郷神社の緑を眼下にできるぜいたくなロケーション

 まずはシティタワー品川に代表される、定期借地権付きのマンション。品川駅港南口から徒歩約10分で坪120万円程度、90平米台で4000万円台というのは、70年後に更地にして返却する定借付とはいえ、魅力的な設定でしょう。
 定期借地権付の都心部のマンションは、図1のリストにもあるとおり、09年にかけても供給される予定。話題を集めることになりそうです。

図1.定期借地権(定借)で割安な物件例
物件名 交通 ポイント
パークコート神宮前 東京メトロ千代田線「明治神宮前」駅徒歩6分、JR山手線「原宿」駅徒歩8分、ほか2路線2駅 都心でありながら明治神宮の緑もすぐ近く。それでいて定借で割安
イニシア馬込 都営浅草線「馬込」駅徒歩8分 東京23区内でも人気の城南地区、都心部へ好アクセス。定借で割安に
Brillia葛西 東京メトロ東西線「葛西」駅徒歩4分 大手町駅まで16分の葛西駅。定借で、3LDK、70平米台が2900万円台から

 また、大規模・タワーへの反動として、共用施設を極力なくしてコストを抑えた低層・小規模なマンションにも注目が集まりそうです。古くからの住宅街に建ち、街並みに溶け込む外観。生活に必要な利便施設は、大規模マンションのように、敷地内ではなく、マンションの周囲に点在。そしてもちろん、住戸内の居住性、クオリティは高くなっています。
 さらに、総戸数が20〜30戸程度で、マンション居住者の顔が見えやすく、コミュニティが形成しやすいのもメリットでしょう。不審者が近づいてきたときも発覚しやすく、高いセキュリティの効果にも期待できます。

目黒通りに面していてクルマでのアクセスも便利なイニシアイオ目黒学芸大学の建築現場

 かつて豊富に供給されていたコンパクト・マンションも、これから満足度の高い買い物になっていくかもしれません。タワーマンションのようにワンルーム〜4LDKなどの幅広いバリエーションではなく、専有面積30〜50u台の1LDK〜2LDKに特化したことで、都心部ながら価格をセーブ。シングルやカップルなど一定のターゲットには魅力的なプランといえます。

 長谷工総研の発表によれば、03・04年には港区、中央区、千代田区、渋谷区、新宿区と都心5区が供給上位を占めていましたが、06〜08年は新宿、港の上位1・2位に加え、台東、世田谷、江東と城南の住宅街、城東の下町に供給ゾーンが拡大しています。しかも駅徒歩5分の利便性の良い立地で、駅までのアクセスやセキュリティの良さにも期待できる物件が増えているとのこと。エリアの選択肢が増えているのもコンパクト・マンションの魅力といえそうです。

図2.コンパクト・マンションの例
物件名 交通 ポイント
パークリュクス本郷 東京メトロ丸ノ内線「本郷三丁目」駅徒歩2分、都営大江戸線「本郷三丁目」駅徒歩3分、都営三田線「水道橋」駅徒歩7分、ほか 計6路線9駅を使って都心ライフを満喫できる。50平米台の1LDKも用意されているなど、ゆとりの広さも特徴。
イニシアイオ目黒学芸大学 東急東横線「学芸大学」駅徒歩13分、JR山手線「目黒」駅バス7分・徒歩1分、東急目黒線「武蔵小山」駅徒歩18分 シングルに根強い人気の目黒エリア。36平米台の1LDKが2900万円台からと、割安感のある価格
べリスタ椎名町 西武池袋線「椎名町」駅徒歩5分、東京メトロ有楽町線「要町」駅徒歩11分、ほか 三方道路の立地、周囲に高い建物なく通風採光良好。ホテルライクな内廊下はプライバシー保護に効果的。
大規模には「暮らし始めた後」の
コミュニティ活性化が求められる

 大規模・タワーマンションへの反動ともいえるマンションを紹介しましたが、実は“本家”もだまってはいなかった(?)ようです。かつてのスケールメリットを活かした共用施設の“詰め込み型”ではなく、居住者が自然に使える施設を重視し、マンション内部のコミュニティ形成をサポートするマンションが登場しています。

 その先駆け的な存在だったのが、子育てを核に居住者間のコミュニティ形成を促進するため、産学共同研究のアイデアを導入した「アクアテラ」。居住者同士のコミュニケーションと教育を目的に、幼稚園年長・小学生を対象にした地下実験教室を採用した「サクラディア」も話題になりました。

「子育て」をキーワードにした共用施設は、今後さらに注目が集まりそうだ

 最新の試みが採用されているとして注目を集めているマンションは、「パークシティさいたま北」です。こちらの中庭は、単純に眺める、散歩するだけでなく、居住者同士が自然にふれ合い、語らえるような「楽しむ」ための空間。森林浴を楽しめそうな木立や子供たちに緑を育てる歓びを教える野菜やハーブを植え込む「菜園/ハーブガーデン」、「バーベキューコーナー」など幅広い世代が交流できるような仕掛けが盛り込まれています。さらに乳幼児教育のノウハウをもつ企業との提携により、独自のプログラムを持つ託児施設も設置していて、ここを介した交流も始まりそうですね。

 また、「Brillia L-Sio 萩山」では、マンションの敷地内に作られる1万平米もの広大な公園がコミュニティの活性化に大きな役割を果たしそう。東京都が全国に先駆けて施行した民設公園制度を採用した第1号物件です。

図3.コミュニティを活性化する仕掛けのある大規模マンションの例
物件名 交通 ポイント
アクアテラ 東京メトロ南北線「王子神谷」駅より徒歩16分、またはバス5分・徒歩1分、JR京浜東北線「王子」駅・都電荒川線「王子駅前」駅よりバス14分・徒歩1分、「王子」駅(予定)より専用シャトルバス約7分、徒歩1分(予定) 子育てを核に居住者間のコミュニティ形成を促進。東京学芸大学とコミュニティ形成支援会社・セルフィッシュネスとの連携によるコミュニティづくりのアイデアを導入する計画。教育系学部と企業による産学共同研究という珍しい取り組み。
サクラディア JR京浜東北線「浦和」駅バス14分 ・徒歩2分、JR埼京線「南与野」駅徒歩24分 「幼稚園年長・小学生のための理科実験専門教室【キッズラボ】」を実施。居住者同士のコミュニケーションと教育のためにミキハウス子育て総研株式会社がプロデュース、ECC総合研究所が運営。
パークシティさいたま北 JR高崎線・湘南新宿ライン「宮原」駅徒歩6分、JR川越線「日進」駅徒歩8分 「さいたま副都心」複合開発計画内に住・商・学・公園が集積し、住民同士のコミュニティが育まれる。高崎線は東京駅乗り入れ予定(2013年度予定)で、交通の利便性向上。
Brillia L-Sio 萩山 西武拝島線「萩山」駅徒歩4分 東京都の民設公園制度を利用した第1号マンション。敷地の約7割にあたる約1万平米が公園。居住者同士のイベント開催などコミュニティ形成に役立つ
新築マンション供給は減少するも
納得いく買い物はできる?

 08年、物件の供給数は、これまでに見られないほど急激に減少していきました。最終的には、今年の首都圏のマンション供給は4万数千戸にとどまるのでは、という指摘もあります。
 ちなみに07年の首都圏新築マンション分譲戸数は6万6617戸、06年は7万9840戸(いずれも東京カンテイ調べ)でした。仮に08年の分譲戸数が4万数千戸にとどまれば、07年に比べると30%以上のマイナスになりそうな情勢です。
「90年代半ばから続いてきた新築マンション市場の拡大は、終焉を迎えつつあるのかもしれません」

2009年は新築マンション市場に多様な選択肢が揃い、買い手にとって良い年になるか?

 さあ、もうすぐ09年です。新築マンションの供給数が増加に転じる要因はいまのところ見あたりません。ただし、少々古い話ではありますが、90年代前半は首都圏の新築供給数は4万戸台と現在の水準とほぼ同じでした。あるいは、今までが多過ぎたという見方もあります。
 むしろ“反動”からいろいろな選択肢が生まれ、その中から選べて、納得のいく買い物ができる可能性はふくらみそうです。
 09年は「新築か中古か」という枠から離れてみることで、新築マンションの新たな魅力や総合的な価値を再発見できる年になるのではないでしょうか。

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